日本の音とリズム。音楽ってこういうことだったのか。
小泉文夫さんは民族音楽の研究者で、東京芸大の邦楽の先生。日本の音階を解説する文章では必ず引用される人です。
押しも押されぬ大研究者でいらっしゃるようなのですが、まえがきでは自分のことを「研究家」とおっしゃっています。
今、新刊で普通に手に入るのはこの2冊。
いずれも講演をまとめたもので、とてもご機嫌な語りに夢中になります。話が上手い人っているんだなあ。
日本の音階は基本4種類
テトラコルド
多くの民族音楽の音階では1度と4度の音が基本になっていて、日本の音階もそこは同じ。その間に1個だけ音が入っている(テトラコルドというそうです)。
近似として半音を単位にすると、1度と4度の間には、短2度、2度、短3度、3度の四つの音があるので、これで4種類の音階ができます。
ド、レ♭、ファ
ド、レ、ファ
ド、ミ♭、ファ
ド、ミ、ファ
日本ではこの4種類の音階がすべて存在します。というか、そう考えると大変すっきり理解できるというのが大発見だったみたいです。そりゃそうでしょう。そもそも12平均律なんかじゃないだろうし。
ちなみに、これは歌舞伎や能やお座敷の小唄のみならず、雅楽やわらべうたまでぜーんぶ統一的にすっきり理解できるというものです。私が子供のときお風呂に入って「いーちーにいーさんーしー」と数えてた時だってこのどれかなのです。ああ、知らずにやってたよ。私ってミュージシャンだったのね。
テトラコルドの2段積みでオクターブに
このままだとオクターブの半分しかないので、テトラコルドをもう一個上に乗せる。
例えば、1度/1度の半音上/4度のテトラコルドの上に、5度/5度の半音上/5度の4度上(1度のオクターブ上)を乗せると、
ド、レ♭、ファ、ソ、ラ♭
という5音からなる音階ができる、という具合です。
ラ♭は短調でよくあるからいいとして、2音目がいきなり半音上ってほんまかいな、ブルガリア民謡かいな、と思うかもしれませんが、近くに楽器があったら弾いてみて下さい。私は
「おおー、日本の音〜」
という歓声をあげました。いくらでもメロディが浮かんできて、ついつい歌っちゃいます。そうか、音楽ってこういうことだったのか、という感じ。
5音の音階って少なくない?
隙間が多いからこそ自由自在
5音ですから、一種のペンタトニックと捉えればギタリストの皆さんにはおなじみですから、自由自在な感じはニュアンスとしては理解していただけると思います。
しかも音を減らして5音じゃなくて、もともと5音ですから、思いっきり派手なビブラートしてもいいし、タメにタメる微妙なチョーキングとか、中途半端っぽいポルタメントしてもいいわけです。間違った音出したことにはなりません。そう、アレです。こぶしです。
音が少ないからこそ、自由自在に創造性を発揮できるのであります。
転調も自由自在
我々が普通に知ってる音階というのは西洋の7音の音階です。オクターブを12個に割ったうちの7つですから、ぜんぜん違うスケールってのは作りにくい。主音が同じだったら、大まかに言って長調と短調の2種類なわけです。
もちろん、組み合わせ上は色んなものが考えられますが、安定して使えてセンスとしてしっくりくるものでとなると、やっぱり長調と短調の2種類くらいになるんだと思います。
最初、日本の音階の解説を読んだとき、
「はたして、この4つの音階は長調か短調か?」
と思ったのですが、そうではありませんでした。4つの調があるのです。さらに、上下で違うテトラコルドを使うのもアリ。
だから転調(というかどうかは別として)だって、同じ主音で長調→短調とかその逆とかだけじゃなくて、もっと色んなニュアンスがだせるわけです。
それってモードじゃないの?という風に思ったりしますが、音階(スケール)と旋法(モード)ってのは似て非なるもんなんだろうと思います。
「お茶の水〜」は日本のリズム
って書こうかと思いましたが、長くなったので、リズムの話はまた回を改めます。小泉さんにかわって解説するつもりじゃなくて、自分が忘れないためにというつもりでまた書こうと思います。
追記
ほんとのこと言うと、新刊で手に入る本はもう一冊あります。
こちらは学術論文。
『日本傳統音楽の研究(1)民謡研究の方法と音階の基本構造』と『日本伝統音楽の研究(2)リズム』を合本で復刻したものだそうです。
手にしてみたい本なのですが、論文なので研究の手続きの説明とか長そうだし、値段も高いのでまたいずれ。
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sekstel (金曜日, 03 11月 2017 18:57)
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